「昼間から飲む口実」として誕生?
ところで、ワインに限らず、別のお酒の宣伝にも、使われた、ヴェルディの「乾杯の歌」を含むオペラ「椿姫」は、イタリアの作曲家の作品ですが、舞台は、フランス・パリとその郊外です。原作が、フランスの作家、アレクサンドル・デュマ・フィスだからなのです。このアレクサンドル・デュマ・フィスは、かの「三銃士」などを書いた大デュマこと、アレクサンドル・デュマの息子で、父親は、文筆で稼いだ莫大な財産を、派手に浪費して使い果たした、といわれていますから、息子は、そんな父の生活を見ていて、この物語を構想したのかもしれません。
しかし、ヴェルディのオペラでは、主人公が「パリの夜の社交界の女王、通称『椿姫』」、というところから、イタリア当局に睨まれる可能性を考慮したのか、ストーリーは椿姫と相手の青年貴族の純愛物語風に、名前も原作とは少々変えて、なるべくスキャンダラスにならないように、配慮されています。それでも、イタリアの初演当時は、とんでもない内容、とされて、失敗だったと言われています。その後の成功を考えると、想像しにくいエピソードです。
有名な「乾杯の歌」は、華やかな夜会のシーンである1幕に登場します。このとき、主人公達が飲んでいたワインは、一体何だったのか? と想像するのも楽しいです。
ちなみに、ボジョレー・ヌーボーの解禁日、フランスでは、みな好き好きにお気に入りのワインを飲み、あまり、ボジョレー・ヌーボーだけを飲んでいる人は見かけません。どうやら、「昼間から飲む口実」に使われているのが、真相のようです。
本田聖嗣