福祉を愛する者による現行制度批判

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現行制度の「落とし穴」を埋める

   本書は、現在の福祉制度には「落とし穴」があると指摘する。高齢者、障害者、母子家庭といった支援対象者を定義し、「線引き」することで、他の支援を必要とする者を排除する一方、逆に、これらの支援対象者を「弱者」としてレッテル貼りすることで、囲い込み各人が持つ可能性の発揮を阻害してしまうというのだ。つまり、制度が存在するが故に、本来、支援が必要な者にそれが届かず、枠をはめられた支援対象者はその枠のために自らを生かしきることができないというジレンマが生じているのだ。

   加えて、少子高齢化、経済の低成長という制約条件の下、福祉制度をこれ以上拡大していくことは期待できず、むしろ、「社会から弾き飛ばされ、排除される人々」が今後増える可能性が高いという。

   そのような状況の中にあって、支援を必要としている人々の個々の事情に応じて、柔軟に、そして適切な支援を行うためには、担い手が自分たちのミッション(理念)を自覚しつつ、制度の枠を超えて対応していくことが必要となる。

   このプロジェクトは、孤独であり、経営的にも厳しい覚悟が求められる「戦い」となる。しかし、そこには「普通の」福祉事業では見られないダイナミズムとともに、開かれた可能性がある。担い手にとっても、支援の受け手にとっても、新しい経験となるのだ。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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