エボラ出血熱が世界に拡大している。世界保健機関(WHO)の2014年11月7日の発表によると、疑いを含む感染者は約1万3300人にのぼり、死者は5000人にせまっている。まさにパンデミックの様相で、日本でも感染の疑いが報告されると、ついに上陸かと大きくメディアに取り上げられる。エボラはそれほど怖いウイルスだ。
エボラに限らず、恐ろしいもの、危険なものはいっぱいある。つい先日まで世を騒がせたデング熱をはじめ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ...。これらに感染すれば死に至るケースもある。大切なことは表面的な数字やイメージに振り回されないこと。「いま、そこにある危機」を学び備える3冊を紹介しよう。
J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中。
致死率90%「エボラ出血熱」のこと、きちんと理解していますか?
エボラ出血熱はこれまでにも何度か200人規模の死者を出した「アウトブレイク」を繰り返してきたが、多くの日本人にとっては対岸の火事、遠いアフリカで起こっている他人事であった。しかし、どうやら今回はのんびり構えていられない。
「感染し発病すると目、口、鼻など体の孔から出血し、致死率はなんと90%以上、エボラ出血熱に対する絶対に効くというワクチンも治療法もない」
これは目をそむけることができない事実だ。ただ、そこだけに目をやって、怖い怖いと騒いでも何の解決にもならない。そもそもエボラとは人名なのか地名なのか、何なのか。『ホット・ゾーン「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々』(著・ リチャード・プレストン、訳・高見浩、1300円、飛鳥新社)は、感染メカニズムからウイルス制圧に命をかけた医療関係者たちの戦いまで、エボラ出血熱のすべてを描いたノンフィクション。1994年に出版されたベストセラーが、世界的規模に感染が拡大した今秋に復刊され、注目を浴びている。エボラ出血熱を正しく理解するための必読書だ。
エボラが日本でも...緊急事態を想定したフィクション
祥伝社の『D1 警視庁暗殺部』(著・矢月秀作、741円)は、ノンフィクションではなくフィクション。エボラ出血熱のことを系統立てて学ぼうという方におすすめするものではないと、まずはお断りを入れる。その上でこんな事態を想定してみてはどうだろう?
「東京・吉祥寺の放火事件で遺体からエボラウイルスが検出された」
累計100万部を越える『モグラ』を手掛けた矢月秀作の新シリーズ。警視庁暗殺部が、法では裁けぬ悪に悪で対抗するというストーリー。痛快な決め台詞「桜の名の下、極刑に処す!」は、「必殺仕事人」を想起させると多くの人がレビューしている。
小説のような事態が現実に起きないことを強く祈りつつ、小説以上のショッキングな出来事が頻発する現代社会。エボラ出血熱、デング熱などの脅威を、ベストセラー小説で仮想体験しておくのも、危機に備える手立ての一つかもしれない。
ついうっかりで、命を落とす花が 身近なところにある危険
エディブルフラワー(食用の花)が食卓を彩る一方で、食べると怖い、死に至る花や植物がある。
『日本の有毒植物』(著・佐竹元吉、2160円、学研教育出版)は180の植物について、そこに潜む「危険」を紹介する図鑑だ。トリカブトに猛毒が含まれることはもはや有名で、ミステリーの題材だけでなく、実際の殺人事件でも使用を指摘されたことがあるが...もっと身近などこにでもある植物に危険が潜んでいたとは。たとえば秋の七草の一つ、桔梗は食べると神経が麻痺する。正月、新年を祝う福寿草はフキノトウと間違えられやすく、誤食すると激しい嘔吐を繰り返す。酒の肴として居酒屋でおなじみギンナンには、食中毒を起こす成分が含まれているので過食には(とくに子どもは)注意したほうがいいといったことが学べる。ポケットサイズで実用的ではあるが、「心にきく植物」といったコラムもあって、アウトドア派でなくても雑学書として持っておきたい一冊だ。