著者を、そしていまなお読者を衝き動かす...太平洋戦争末期、沖縄からの海軍電文

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昭和そして沖縄を学ぶ契機に

   昭和史は、その時代を生き抜いた幾千万人それぞれの数だけ存在し、書籍も膨大である。それら書籍では、軍の作戦や政治の動き、あるいは被害の悲惨さが語られるのが常であり、豊かな平成の世からすると重苦しさは免れない。

   本書にもそうした記述はある。戦場の記述は悲惨の一言に尽きる。そうした中ではあるが、部下・県民を問わず命を粗末にさせぬ姿勢を保持した稀有の軍指揮官が主人公である点が、一筋の光明となっていると感じる。人権保障が徹底した現代の我々にとり、部下の死に事後うなだれ、民間人の保護を常に考えた中将の姿は、時代を超えた普遍的な価値を体現しており、より共感しやすかろう。

   そしてその共感があればこそ、本書は沖縄を知る契機となり得る。本土の無関心こそが沖縄を孤立させる。本書を再読し、改めて沖縄を考える縁とする次第である。

酔漢(経済官庁 Ⅰ種)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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