「オリジナル版」はお化けが出る暗闇にぴったり
ロシアの『力強き五人組』、という、新しいクラシック音楽の伝統をつくろうとしたグループの一員だったムソルグスキーは、この曲を生涯にわたり、何回も改訂します。しかし、この曲が広く知られるようになったきっかけは、『五人組』の世話役たるリムスキー=コルサコフという作曲家が、編曲版を作ってからでした。ムソルグスキーの音楽は、力強い一方、粗野な面が多々あったのです。近年では、それらの「オリジナル版」の演奏も増えてきましたが、より荒々しいオリジナルバージョンを聞いていると、ハロウィーンにもぴったりだなあ...という気がします。祝祭前夜に、とてもとても怖い思いをする、というお話ですから、ハロウィーンのお化けが出る暗闇、のイメージにぴったりなのですね。
ところで、この曲は、何回も改訂されているにもかかわらず日本語の邦題は、いつも「はげ山の一夜」とされていて、頭髪を気にされる諸氏からは、すこぶる評判がよくありません。この名曲の題名を聞くたびに、嫌な思いをされるのだそうです。こちらの訳も、そろそろ改訂しては...と思いますが、「木が大変少なくなった山での恐ろしい一夜」という題名だと...やっぱり、間延びがして、ピンと来なくなってしまいますね...。
本田聖嗣