原語では異なるニュアンス
ところが、これは、一種の誤訳、又は願望の入った意訳なのです。原語のイタリア語で、このアリアの歌い出しは、Un bel di verdemoとなっていて、belには、確かに「晴れた」という意味もありますが、ただ単に「よい、素晴らしい」という意味の方が濃厚なのです。英語のfineに似ていますね。この日は、蝶々夫人にとって、素晴らしい日である、という意味が込められていますが、翻訳上は「ある日に」以上は少し脚色の気配がただよいます。
でも、蝶々さんに共感する日本人の心情からすると、その日はきっと、抜けるような青空であって欲しい...という気持ちが出てくるので、「ある晴れた日に」という邦題が、定着しているのかもしれません。
オペラでは、その日が、実際には、大変な悲劇の日になるわけですが......。
本田聖嗣