「ある晴れた日に」は本当に晴れていたか?

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原語では異なるニュアンス

   ところが、これは、一種の誤訳、又は願望の入った意訳なのです。原語のイタリア語で、このアリアの歌い出しは、Un bel di verdemoとなっていて、belには、確かに「晴れた」という意味もありますが、ただ単に「よい、素晴らしい」という意味の方が濃厚なのです。英語のfineに似ていますね。この日は、蝶々夫人にとって、素晴らしい日である、という意味が込められていますが、翻訳上は「ある日に」以上は少し脚色の気配がただよいます。

   でも、蝶々さんに共感する日本人の心情からすると、その日はきっと、抜けるような青空であって欲しい...という気持ちが出てくるので、「ある晴れた日に」という邦題が、定着しているのかもしれません。

   オペラでは、その日が、実際には、大変な悲劇の日になるわけですが......。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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