「絶対に見返してやる」そして「ほら、みろ!」
本木さんは資生堂の仕事も多く引き受けていた。資生堂名誉会長の福原義春さんは「巨大なアンテナのような人だった」という。80年代初め、「時代は動いている」という言葉をしばしば聞いた。福原さんに言わせると、本木さんのスタイルは「フェラーリとダンプカー」、すごくセクシーでエレガント、行動力はダンプカー並みということだ。
モデルの秋川リサさんは、メーカーの担当者に会うなり、「ごめん、うちは美人しか使わないから」と追い返された。その時同行した本木さんは、「絶対に見返してやる」といって、同じメーカーの別媒体に秋川さんを起用させた。「ほら、みろ!」といったのが忘れられないと秋川さんは話している。
女優の木内みどりさんは「よい部分を認め、誉め、育ててくれた」と言っている。デザイナーのコシノジュンコさんのように、本木マジックで新しい分野に挑戦した人がたくさんいる。女優の真行寺君枝さんは「甦れ、本木魂!」と叫んでいる。女性の活用は、総理大臣が言うより、本木さんのような人が多く出てくることがいいのだろう。
本木さんは死の直前まで仕事に没頭していて倒れ、去って行った。日本経済のバブルも去っていた。