ブータン王妃が紹介する幸せの国の真実
ブータンといえば平和でのどかで温かい、しあわせなイメージを抱いてしまうが、1952年、最高権威化身高僧が当時の国王に暗殺されるという歴史があるように、この国にもやはり陰謀とか、どろどろしたものがあったようだ。しかし、暗殺された高僧の家系に生まれた本書の著者であるドルジェ・ワンモ・ワンチェックが、暗殺者の孫にあたる第4代国王と結ばれ、「和解」があり、そして今や世界中が、ほんとうの豊かさとは何かと注目するようになった「国民総幸福」へとつながっていく。
『幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔』(著・ドルジェ・ワンモ ワンチュック、訳・今枝由郎、日本放送出版協会、2268円)は、ブータン王妃、(国王は譲位により5代目になっているので正確には元王妃)が、ブータンの歴史や自然、宗教、民族、風習などを、自らのおいたちと絡めながら語るもの。淡々とした語り口の中に、王妃の人柄やさしさがにじみ出て、あたたかな気持ちになれる。観光ガイドブックではないが、ブータンに行ってみたくなる本。