2014年2月15日、オーディトリウム渋谷にて6日間限定で公開されたある映画が、一つの社会現象と言えるほどの大旋風を巻き起こした。
カンパニー松尾氏が監督した「劇場版 テレクラキャノンボール2013」。
驚異的な劇場動員数から上映は何か月も延長や拡大を繰り返し、日本列島を席巻したその魅力はどのように人々の心を打ったのだろうか、レビューを交えながら見ていく。
人間ドラマに見る笑いと戸惑い
「テレクラキャノンボール」は、同監督が1997年から監督する企画アダルトビデオ(AV)シリーズ。今作は、600分の「2013」を132分に再編集した「劇場版」だ。
物語の内容としては、
「6人の男達が東京から仙台、青森を経由して札幌まで、車3台、バイク2台でレースしながらテレクラやナンパ、各種出会い系を駆使して現地素人をハメ倒す痛快セックスバトルドキュメント」(UPLINK、上映予定映画詳細より)
などの紹介が見受けられる。
「あらすじを見た時...」あるいは「タイトルを見ても...」「何の食指も動かなかった」という人たちが、こぞって鑑賞後の評価を「観てよかった」と態度が変わる理由は、おそらくそこにAVという枠組みを超えたドラマを見出すからのようだ。
「人間ドラマ、下手な映画より人間の喜怒哀楽を上手にみせている」
「こんなに他のお客さんと一体となって、笑って、拍手を送った映画はないです」
「私には、すごく劇場内の共感をふくめてすごく心揺さぶられた作品でした」
など、とにかくその迫力に息を呑んだとの声が多数あり評価は高い。
「こんなに笑ったAVは初めてで、観た後の妙な爽快感?は今まで経験した事のないものでした」という声もあるように、「拍手に笑い、悲鳴やどよめきなどで溢れ返っていた」というその劇場の様子自体、作品のジャンルを考えればあまり見られる光景ではないだろう。
監督のカンパニー松尾氏はAV監督であるものの、ミュージシャン・豊田道倫のライブ映像を手掛けるなど、ビジュアル作家として幅広く活躍する人物であり、また、「テレクラキャノンボール」については、出演男優陣が本人含めて全員AV監督であることも作品のアクセントになっている。
「サブカル好きな人だけでなく、もっと多くの人にこんなにスゴイ作品があるのだということを知ってもらいたいですね。まぁ、嫌悪感を抱く人もいるでしょうけど」
「ただ単純に面白い...んだけど見終わって何だか整理のつかない妙な感情が残る...」
など、このように心に刺さる作品として認められる理由もこれらの点にあるのかもしれない。
渋谷の小さなカルチャー・センター、UPLINKでは、2014年12月20日から7日間限定で再上映が決定している。
現段階で、この劇場版のDVD等の発売予定はないが、600分の「2013」は発売中。
「劇場版の方がコンパクトにまとめられていてよかったです(笑)ちょっとAV版は長すぎますね」などの指摘もあるが、一見の価値ありだ。
ただし、視聴する際は、くれぐれもAVである点にご注意を。