国家経済戦略に高まる比重 政策判断が求められる開発の順位付け
最後に、研究開発については、市場メカニズムの補完だけでなく、国家経済の戦略的な観点の色彩も強くなってきている。
「経験やR&Dが重要な意味を持つ産業では、他の企業に先駆けて大量の生産を行い多くの生産経験を積んだ企業が競争上優位に立つことになる。資源配分の効率性という観点からは規模の経済性を生かし生産費用を下げていくことは望ましいことであるから、限られた数の生産者が十分な生産規模を確保し経験を蓄積することが重要となる。この限りでは、どの国が生産を行ってもかまわないのであるが、電算機、半導体、航空機などの先端産業は、そのような産業を国内にもつか否かがその国の将来の経済発展に大きな影響を及ぼすから、各国がそれを自国にもとうとする。ここに各国間に極めて激しい利害の衝突が生じる原因がある。」(第20章 P253)
冷戦末期の昭和63年当時に比べて、各国が遠慮なく、場合によっては、品がなく、露骨に利害を激突させるようになったグローバル化の現在においては、先端産業の存立・発展が国益に及ぼす影響は大きい。政府は、効果的かつ効率的な観点からの判断だけでなく、国家としての戦略的な観点、他国との競争や協調の観点から、政策的に関与すべき研究開発分野の順位付けの判断も求められている。その判断に当たっても、経済成長理論等に基づく原理原則の適用が重要であると考える。日々勉強は続く。
<経済官庁 J>