実学を授けないプログラムの役割
最後に辛口のことを書く。このプログラムで「教養は身についたが経営は失敗」の者が出ては情けない。してみると、ビジネスを志向する方にとって実学を授けないプログラムは、あくまで日本の企業内幹部育成あるいはMBAコースの補完に止まらざるを得ないのではあるまいか。財務諸表分析の実務も教えず国際的に認証された学位もない「高級教養」プログラムが、半年600万円と聞く。本プログラムに「唯一無二」のスローガンを掲げる米国仕込みの編者は、さすがは米国MBAホルダーかつコンサルティング企業元幹部と言うべきだろう。
むろん本書のみを読むのであれば費用対効果は極めて高い。評者もこの点は請け負う。
2014年3月には、同じ東京大学出版会から本書の続編とも言うべき「デザインする思考力」が刊行されている。知的好奇心や科学リテラシーを求める方には、併せてお勧めしたい。
酔漢(経済官庁 Ⅰ種)