心の中は常に「荒れ狂う嵐」状態だったか
ともあれ、嵐を思わせるようなピアノの曲であることは間違いなく、中期のピアノ・ソナタの傑作となっています。彼はこの時期、作曲家としては順調に地歩を築いていたのですが、一方で、難聴に悩まされていました。結局、耳が聞こえないにもかかわらず、素晴らしい作品を残したことは、後世の我々は皆知っていますが、彼の心の中は、常に、「荒れ狂う嵐」状態だったのではないか、と想像すると、たとえ、シェイクスピアの作品や現実の嵐を彼が想定していなかったとしても、やっぱり、「テンペスト」という通称がしっくりくるような気がします。ベートーヴェンは、古典派、といわれる時代の作曲家ですが、彼のあとにつづく、ロマン派の時代のモチーフ、「疾風怒濤」を先取りしている、ともいえそうです。