美術の秋――東京・上野の東京国立博物館では2014年10月15日から12月7日まで「日本国宝展」が開かれる。1990年、2000年に続いて3度目の日本国宝展だ。
過去2回では合計約120万人の入場者でにぎわった。今回も多くのファンを集めることになりそうだ。
日本の国宝の約1割が一堂に
今回の国宝展のテーマは「祈り」。人々の信仰心が結実した文化的遺産を集めている。絵画・彫刻・工芸・典籍・考古資料など約120件を展示する。当然ながら出品物はすべて国宝だ。日本の国宝(美術工芸品)は約870件なので、そのうちの約8分の1が一堂に集まる。
古いものでは土偶。仏教伝来以前の原始宗教の存在をうかがわせるものだ。全国で2万点ほど出土している土偶の中から、「縄文の女神」「縄文のビーナス」「合掌土偶」「仮面の女神」「中空土偶」が出品される。
珍しいものでは「元興寺極楽坊五重小塔」(奈良・元興寺蔵)。奈良時代の製造だ。五重塔のいわばミニチュアだが、高さは5メートル50センチもある。実際の塔の十分の一というサイズを意識して制作されたようだ。内部まで忠実に実物の塔と同じ技法で組みあげられている。東京での公開は初めてという。
新しい国宝では、「善財童子立像」。文殊五尊像のうちの1体で、2013年の指定だ。奈良・安倍文殊院蔵。文殊菩薩の像内に建仁3年(1203年)、仏師・快慶がつくったことを記す銘文がある。
東京では久しぶりの公開となる「金印」も見逃せない。福岡・志賀島から出土したもので、教科書でおなじみ。「漢委奴国王」が印面に刻まれている。後漢の初代皇帝光武帝が倭の奴国王に金印を与えたという『後漢書』の記載を裏づけた日本最古の金製品だ。
西欧の信仰との関係を示すものとしては「支倉常長像」がある。慶長遣欧使節を率いて渡欧した支倉常長が、十字架に手を合わせている。ヨーロッパで描かれた油絵だ。使節団が持ち帰った他の品々とともに、2013年にユネスコ記憶遺産に登録された。