NTTドコモは、提供している大規模公開オンライン講座(MOOC=ムーク)のサービス「gacco(ガッコ)」で、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授監修による「よくわかる!iPS細胞」を2015年1月から開講する。受講登録を9月から受け付けているところだ。諸外国では教育の新インフラとして注目されているMOOCの活用が日本でも本格化しそうだ。
有名大学の講義を無料で受講できる
MOOCはインターネットを使って誰もが無料で受講できる大規模な開かれた講義。米国や英国などでは、有名大学の授業もこのサービスを通じて行われるなどネットの進化とともに拡大している。欧米では授業そのものを公開し、修了者には履修証を発行するのが特徴。複数の大学が連携して科目ごとに履修認定を行っている。世界でだれでも無償で受講できるので、高校や大学など高等教育のシステムが未整備な国では特に有効だ。
日本での展開が始まったのはごく最近。東京大学が14年2月、MOOCのプラットフォームの一つ、米edX(エデックス)との配信協定の締結を発表。東大は13年9月から、もう一つのプラットフォーム、米Coursera(コーセラ)を利用して、英語による配信を行っている。
edXは、米ハーバード大学と同マサチューセッツ工科大学(MIT)の出資によって12年5月に設立されたNPO。サービス開始以来、31大学が140以上の講座を公開し、登録者数は約200万人以上にのぼる。日本の大学では京都大学が13年から参加している。Courseraは、12年に米スタンフォード大学の2教授によって設立されたベンチャー企業。13年3月現在の参加大学数は62大学で、223講義が提供されている。登録者数は約270万人。
世界で初めて「反転学習コース」を提供
MOOCをめぐって日本では、教育機関や企業などが集まって日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)を組織し、その普及を図っている。JMOOCはedXとCourseraのほか、NTTドコモがNTTナレッジ・スクウェアと組んで展開している「gacco」を配信プラットホームとして公認。gaccoはいわば、日本でのMOOC普及のけん引役を担う。
大学授業などの配信では充実化への途上にあるが、これまで、「ビジネススクール」「俳句-十七字の世界」など多彩な講座を提供している。gaccoは「多くの方へオープンに高等教育を受ける機会を提供することで、誰もが継続して学習できる環境を実現するとともに、日本の多様な知を世界へ発信していくことを目指す」としている。
gaccoはまた、有料ながら一部の講座でオンライン講座と対面授業を組み合わせた「反転学習コース」を提供。講義の視聴などで基本的な内容を学んだ後、講師の指導の元、議論を通じて発展的な内容を学ぶ。「反転学習コース」をMOOC上で提供することは、世界で初めての試みという。