「巨匠の部屋」や「時代の部屋」
今回の展覧会では、そうした同館の誇るコレクションを、美術史の流れを踏まえながらわかりやすく見せることを心掛けている。アイデアの一つが、「巨匠の部屋」だ。
たとえば「モネの部屋」では、横幅6メートルの大作「睡蓮(すいれん)の池、夕暮れ」に、もみわらや国会議事堂を描いた作品を合わせ、同じ空間で見ることでモネの世界をたっぷり体感できるようにしている。「シャガールの部屋」では、初期から晩年まで、各年代を代表する6作品を並べ、画風の変遷を見渡せる仕掛けだ。
スイスにゆかりのココシュカ、クレー、ジャコメッティも特集し、さらには美術の運動や流派をまとめた「時代の部屋」も設けている。「ポスト印象派の部屋」では、セザンヌ最晩年の傑作「サント=ヴィクトワール山」やルソーの肖像画、ドガのパステルやゴッホの風景画など、この時代を代表する作家たちの人気作が並ぶ。「キュービスムの部屋」にはピカソやブラックの静物画、「シュルレアリスムの部屋」にはミロ、キリコ、ダリの作品という具合だ。
いずれも、それぞれの作家の全盛期の作品ばかり。美術史に残る名品の素晴らしさだけでなく、スイスの経済力と「裕福な都市」に住む市民たちの審美眼にも驚嘆することになりそうだ。