海賊は世界史のなかで欠かせぬ存在
『海賊と資本主義』
ドイツの高速道路アウトバーンが、かなり早い時期からドイツ国内を縦横に整備されているのは、ナチスドイツの軍事的戦略があったからだという話がある。ヒットラーという負のイメージが強い為政者であっても、プラスに転嫁できるものを残してきたという事実は存在するわけ。かなり乱暴な表現かもしれないが「明治維新も徳川幕府からみればテロ」という評論家もいる。「勝てば官軍、負ければ賊軍」という常套句があるが、ものごとは「表側」だけでなく「裏側」あるいは「上」「下」「斜め横」いろいろな角度からみれば、全く違うものに見えたり、これまで見えなかったものが見えてきたりする。
『海賊と資本主義』(阪急コミュニケーションズ、著・ロドルフ・デュラン、ジャン=フィリップ・ベルニュ、訳・永田千奈、解説・谷口功一、2160円)は一般にアウトローと思われる「海賊」が、じつは世界史のなかで、大きな役割を果たしているということを、アカデミックに紐解く本である。
「国家とせめぎ合いながら『海賊組織』が資本主義のグレーゾーンから生み出した、ラジオ、電話、インターネット、遺伝子工学、宇宙開発...etc」帯裏に書かれた文言を見るだけで、へえ、そうだったんだとさらに詳しく知りたくなる。