日本では、とうとう2014年9月19日に発売される「iPhone6」と「iPhone6 Plus」。前モデル同様、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの3社が取り扱うと発表された。
そこで気になるのがキャリア選び。同一モデルならば、どこで買っても性能は同じと思われるかもしれない。しかし、"データ通信のスペック"という観点から比較すると、実はiPhone6の性能はキャリアによって大きく違ってくる。そこで今回は、通信機能のおさらいと対応するデータ通信のスペックから3社のiPhone6を比較してみよう。
データ通信の快適性が違う「FDD-LTE」と「TD-LTE」
LTEの電波は、各キャリアによって複数の周波数帯で運用されているが、その仕様は、大きく「FDD-LTE」と「TD-LTE」の二つに分けられる。3社ともLTEはおおむねFDD-LTE方式を採用しているが、auとソフトバンクモバイルはTD-LTEも運用。すでにソフトバンクはTD-LTEに互換性のある「AXGP」という高速回線を、auは「WiMAX2+」をそれぞれAndroidスマホ向けに用意している。いずれもiPhone6で利用できるかと思われ、こうしたカバレッジの広さが通信満足度に与える影響は高いと言える。また、100Mbpsを超える基地局の数を見ると、総務省のHPと各社の発表によるとauの3.5万件、docomoの3.9万件に対し、ソフトバンクは約6.7万件と他社に2倍近くの差をつけている。
各社のネットワーク性能、ビッグデータはどう評価しているのか
iPhone6は様々な最新のネットワーク技術に対応し、各社の強みが通信品質に大きく影響する見通しとなっている。実際のところ、どの程度快適な通信を実現できているのかを測る手段として、最近ではより広範囲にユーザーの実感を測るべくビッグデータ解析が活用されている。これは、スマートフォンアプリを通じてユーザーの通信状況を把握し、集積された情報を全国規模で分析するというものだ。
例えば、ビッグデータソリューションを提供するAgoop社が、アプリを通じて収集した、全国400万件の匿名化されたデータ通信の接続状況を解析し、3キャリアごとの通信状況を比較した調査結果によると、ソフトバンクがスマートフォン全機種の上り・下りにおいて最も安定した通信速度を保てていることが確認できる(調査期間は4月1日から6月30日)。
VoLTEでデータ通信回線のインフラに資源を集約へ
今年に入り新たな音声通話方式として注目が高まっているのが、音声をデータ通信回線で送受信するVoLTE(Voice Over LTE)という技術だ。IP電話のように、音声をパケット通信で送受信することで、発着信の高速化、通話音質の向上など様々なメリットがもたらされる。また、VoLTE対応端末の普及が進めば、従来音声通話用に用意していた回線を順次データ通信用に転用できるため、通信インフラの快適化も期待できるという。
3社を比較してみると、NTTドコモは既にVoLTEを運用しているが、iPhoneへの対応は未定。KDDI(au)とソフトバンクも近日中のサービス開始の宿しは伺えるものの、同じく本端末への対応時期は未定だ。通話品質の向上が見込めるだけでなく、通信インフラの整備をよりデータ通信向けに集約することができるため、今後の各社のVoLTE対応に注目したいところだ。
ポイントは、混雑などに耐えられるデータ通信のキャパシティ
このようにネットワーク技術のポイントやビッグデータに基づいて3社のiPhone6を比較してきたが、重要なのは、混雑時にも快適にデータ通信を利用することができるキャパシティを備えているかという点と思われる。複数の周波数帯を効率よく組み合わせてきめ細かなネットワーク設計をおこない、データ通信専用のTD-LTEを運用できるソフトバンクは、そうした面で他社より一歩リードしていると見られ、ビッグデータもそれを物語っているようだ。
こうしたことに、今後も登場するであろうデータ通信実測調査やビッグデータの解析結果などを加味して、キャリア選びの参考にするのが良さそうだ。