【霞ヶ関官僚が読む本】
夏になると読み返したくなる昭和史の名著

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敗戦と占領の時代…日本近代史に生じた最も深い断絶

   この作品の冒頭で「年々歳々八月一五日がやってくる。あの日は、晴れ上がった暑い日であった。私は、陸軍船舶二等兵で、瀬戸内の小島の磯の断崖に舟艇用の横穴を掘っていた。…(中略)…。たしかに私は、敗戦と占領の時代を生きていた。しかし、生きていただけでは、歴史はわからない。いまからふりかえれば、あれは、日本近代史に生じた最も深い断絶であった。幕末維新からはじまった近代史は、ここで崩壊し、その奈落の底から二度目の近代史が這いあがってきたのである。」という。なんとも素晴らしい書き出しだ。

   また、次の段落で、戦後史の発端を要約しているが、「マッカーサー憲法草案」は「天皇制を徹底的に民主化し、天皇を象徴として存置する一方、日本軍国主義の復活を恐れる国際世論をなだめるために戦争放棄を宣言した。日本政府は、屈辱に身をふるわせながらマッカーサー憲法案を受け入れ、これによって国体は護持されたとしたのであった。要するに、新憲法は、国体護持の悲願と占領統治の必要との抱き合わせだったのである。」とする。最近、議論がかまびすしい日本国憲法の誕生の歴史的文脈を冷静にみつめる。

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