戒律の解釈は一人ひとり違うのです
『一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教』
東京オリンピック開催が決定したころから、「ハラル」という言葉への注目が集まりだした。ハラルは戒律に違反していないことを意味し、いくつかの機関が国内の食品を審査して、「イスラム教徒が口にできる」と認証を行っている。認証が得られれば、16億人に向けて自社商品を売り込める!と期待する事業主は多いはずだ。だが、イスラム学者の中田考はこのハラル認証ビジネスに疑問を呈す。目の前の食品を食べてよいかどうかは、一部の機関が決めるのではなく、コーランなどを基に個人が判断するもの、というのだ。集英社の『一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教』(著・内田樹、中田考、821円)は、ハラルを含むイスラムの根本的な思考について、思想家の内田樹とともにわかりやすく解説した本だ。西欧によって線引きされた国家制度の限界や、同じ神を崇拝するユダヤ教徒との衝突について、日本人にはなかなか理解しがたいトピックについても熱く語る。若者に自宅を明け渡し、食事はいただきもので賄う、イスラムに則った中田のライフスタイルにも注目だ。