米市民の大半は「監視プログラムを容認」
本書の後半では、スノーデンの語りとは離れ、著者の反権力の立場からの主張がひたすら続く。多少偏りが感じられるところではあるが、権力が国民を監視するためのツールを手に入れたらどうなるか(当初テロ対策のために認められたはずの監視システムが、いつの間にか経済スパイや外交交渉などにも幅広く活用されていく)、国民は監視されているかもしれないと認識するだけで、その行動に十分な萎縮効果が働くといった分析は傾聴に値する。
著者の怒りの矛先は、第四権力として政府の職権濫用を抑制する機能を持つべきメディアがその役割を果たしていないことにも向かい、今回の告発を巡って大手メディアやそれに属するジャーナリストが、スノーデンや著者の信頼をおとしめるような政府寄りの報道をすることについての批判が展開されている。
他方で、本書では、そのようなネガティブな報道も含めて、今回の告発が米国世論にどのような影響を与えたかということについては十分な考察が及んでいない。一部引用されている世論調査の数字によれば、政府のテロ対策を「行きすぎであり、それが一般的な市民の自由を制限しているという懸念の方が大きい」とする回答が、「国を守るためには充分でないという懸念の方が大きい」という回答を2013年に初めて上回ったとするが、一方で「NSAの監視プログラムを容認する」という回答は、依然として半数を超えている。