「暴露 スノーデンが私に託したファイル」(グレン・グリーンウォルド著 新潮社)
米国国家安全保障局(NSA)がインターネット上の大量の個人情報を秘密裏に収集・分析していることを、元CIA職員のエドワード・スノーデンが告発し、世界に衝撃をもたらしたことは記憶に新しいが、英紙ガーディアンにおける一連のスクープ記事で中心的役割を果たした弁護士兼ジャーナリストの著者が、その内幕を本書において明らかにしている。
"スノーデン事件"以前から、米国、英国、カナダ、オーストラリア及びニュージーランドのアングロサクソン系5カ国(Five Eyes)の諜報機関による世界規模の通信傍受システム「エシュロン」の存在が半ば都市伝説的に語られていたところではあるが、スノーデンが明らかにした「PRISM(プリズム)」プログラムでは、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブック、アップルといった、誰もがその製品やサービスを利用している、現在のインターネットを牛耳る名だたる民間企業までもがNSAの諜報活動に協力しているとされ、『1984年』のビッグブラザーを地で行くようなことが現実に行われていると感じた人も多いのではないだろうか。
システムが存続すべきか人々に問いたい
本書の前半では、スノーデンが著者にアプローチしてNSAの活動に関する政府の機密文書を提供し、報道に至るまでの様子が描かれている。電話の盗聴やネットの傍受を神経質なまでに警戒し、米国当局にいつ拘束されるかとおそれながらスノーデンがインタビューに応じるやりとりや、新聞社内の組織の論理に握りつぶされそうになりながら著者が記事の掲載にまでたどり着くまでの緊迫感は、スパイ映画さながらである。
インタビューの中で、スノーデンは今回の"暴露"の動機を「(プライバシーを消滅させるNSAの)そうしたシステムを破壊したいわけではありません。ただ、そのシステムが存続すべきかどうかを人々に問いたいのです」と語る。やや美化している感はあるが、当時29歳の若者が残りの人生を賭してまで世の中に問うからには、彼なりの良心と覚悟に基づいた行動であったことがうかがい知れる。