安易な使用には大きなリスクも
ビッグデータは、研究者が「仮説」を立て、「検証」するという知的な営みを大きく変える。研究者にとって、これまで仮説を立てる場所は、「限られた観察の場」と「頭の中」、そして「先行研究(既存の文献)」であった。これがビッグデータの登場に伴い、広大なデータの海の中から、これまで人間が感覚的に認知できた形とは違った過程で、突如として奇想天外な新たな仮説が生まれてくるという。
確かに、ビッグデータは、ある事象と別の事象の間にある(意外な)相関関係をあぶり出してくれる。しかし、人の命のかかった医学の世界では、何らかの相関関係が明らかになったとしても、その背景に潜む因果関係を見過ごしてしまえば、取り返しの尽かないミスを犯すかもしれない。
「(Amazonのように)商品購買履歴や閲覧履歴のビッグデータを基にクラスター分析を行い、消費者にお勧め商品を提案する場合は、そこに過ちがあったとしても生命に関わるようなリスクとなる可能性はそれほど大きくない。ところが、例えば医学において薬の効果を間違って解釈してしまえば、生死に直結するリスクが出てくる」
「ビッグデータの解析結果、そこから導き出された情報が常に正しいとは限らない。膨大な数の分析を通して、偶然に見つけられた相関ばかりが発表・報告される懸念も少なくない」
ビッグデータがスポットライトを浴びる中で、今、必要なことは、データを直接解析するスタッフ(データサイエンティスト)として優秀な人材を得るとともに、医療ビッグデータを正しく活用するための方法論を確立することだろう。