霞ヶ関官僚が読む本
医療ビッグデータの持つ潜在力、どう活かすか

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日本でも進む健康・治療情報などのデータベース化

   本書によれば、滋賀県長浜市では、京都大学と連携して「ながはま0 次予防コホート」と称する1万人規模のコホート研究が進められているという。質問票による生活習慣等の情報742項目、健康診断による検査結果145 項目に加えて、何と約3700検体のゲノム(遺伝情報)も収集されている。今後、10 年、20 年と蓄積されていくデータの価値は大きいだろう。

   期待されるのは、がんや脳卒中、心筋梗塞等の発症メカニズムの解明と、認知症等の予防策だ。例えば、認知症になった人の血中物質を遡って分析することで早期発見が可能となったり、特定の遺伝子をフォローすることで、その遺伝子が発症に影響していることを確かめることもできる。その結果、こうした素因を持つ人達に対し、症状が出る前にアラートを出すことができる。まさに、発症阻止や遅延を目指す「先制医療」である。

   また、現場の医師達が主導して、全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析するためのデータベース(National Clinical Database:NCD)も作られている。全国約4000 施設が参加し、既に約310万例が登録されている。患者の手術前の情報を入力すると、たちどころに、成功率や合併症の発生率等がリアルタイムで算出されるほか、患者の予後についても表示されるという。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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