「医療ビッグデータがもたらす社会変革」(中山健夫監修、日経BP社)
「血圧は147mmHgまでなら正常値?」。今春、日本人間ドック学会等が公表した健康診断の基準値が物議を醸したことは記憶に新しい。この新数値、人間ドックを受けた150万人のうち持病がない等の条件を満たす「健康な人(約34万人)」の中から5万人を抽出し分析したところ、147mmHg未満なら健康だった(従来の基準値は130mmHg未満)ことを根拠としている。まさに医療ビッグデータの活用例である。
本書は、昨今の流行語でもある「ビッグデータ」の医療分野での可能性と課題について、素人でも理解できるよう、わかりやすく解説している。
検索データが予測するインフルエンザの流行
米国では、医療とは無縁と思われるデータが、新たな医学的な知見をもたらしたという。Googleが提供する「Google Flu Trends」(グーグル・インフルトレンド)がそれだ。インフルエンザが流行すると関連するキーワードの検索が増えることに着目し、過去5年間の数千億件もの検索ログデータを解析し、実際のインフルエンザ患者数と突き合わせたものだ。
米国では、CDC(疾病管理・予防センター)が医療機関から報告を受けた受診患者の統計を発表していたが、データ集計自体が週次であったために実際の感染状況とのタイムラグが避けられなかった。しかし、このGoogle Flu Trendsは、その正確さだけでなく、即時性にも優れており、ほぼリアルタイムで正確な流行予測を公表しているという。