【書評ウォッチ】他人事ではない「誰が税を?」 金持ちからもっととるべきか

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   金持ちからもっと税金をとるべきか。『金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい』(ポール・クルーグマンほか著、東洋経済新報社)が、ズバリ問う。

   「もうけているのだから、その分は負担もしろ」「努力して稼いだ人からとると、誰も努力しなくなるぞ」……現代社会の基本的な問題をノーベル賞学者やレーガン元米大統領の経済顧問が賛成反対に分かれて議論する。ちょうど日本では安倍政権が大幅な法人税減税を打ち出して、それに代わる財源探しが始まる寸前。金持ちを優遇すれば、その分を誰かが出すことになる。他人事ではない。【2014年7月13日(日)の各紙からⅠ】

パチンコ? 携帯? 企業減税の財源探し

『金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい』(ポール・クルーグマンほか著、東洋経済新報社)
『金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい』(ポール・クルーグマンほか著、東洋経済新報社)

   繰り返されてきた論争だ。貧富の差がどんどん広がっているから、現代ではいっそう深刻。ただし、両者の言い分は昔も今もあまり変わらない。

   本では2対2に分かれて議論している。もとはカナダのディベート番組だ。

(金持ち増税賛成派)平等な社会のほうがいろいろな面で望ましい。富裕層の税負担を増やしても経済に悪影響はない。
(反対派)成功者は報われて当然だ。課税を強めると、金持ちは抜け道を探すし、海外に逃げる。社会の活力が衰える。

   わかりやすいと言えばそうだが、両者が自分の意見を主張するばかりで、結論は出ない。「増税問題の論点整理に役立つ読み物だ」と、東京新聞と中日新聞の評者・根井雅弘さん。

   日本では、安倍政権が企業などの法人税を現在の35%から数年以内に20%台へ引き下げをめざす。問題は代わりの財源で、サラリーマンや庶民がその分を負担するのかどうか。

   自民党内ではパチンコや携帯電話からとろうとする動きも報じられている。検討されていい金持ち増税や宗教法人課税は、選挙のカネと票がからむためか、本格的な議論にはなっていない。とりやすいところからとっていけば、結局は弱い庶民が払う。これも繰り返されてきた構図だ。今からしっかり監視しておかないと、怪しげなことになりかねない。

カリスマホストや行列ラーメン店の脱税現場

   <もう一冊>『税務署VS脱税者どんな善人でも税金はごまかす』(大村大二郎著、角川SSC新書)が日経新聞に。カリスマホスト、行列のできるラーメン店、寺の住職といった、いかにもありそうな脱税の話。元国税調査官の著者ならではの現場の攻防だ。

   ただ、所得税を天引きされているサラリーマンや、納税どころか運転資金に追われる中小企業には遠い世界。金持ちはたしかに汚くごまかすものだなーと驚くしかない。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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