外国研究者が注目する日本的資本主義
『グローバル資本主義の中の渋沢栄一』
開国したばかりの小国が、最新鋭の巨大製糸工場を設立するには、計り知れない資金と政治力が働いたに違いない。富岡製糸場の計画に一役買ったのが、日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一だ。日本初の銀行や近代的な都市インフラなど500近い企業にかかわり、日本経済の礎を築いた。経済を取り巻く研究者の間で今、渋沢が主張した「合本主義」を見直す動きが出ている。リーマンショック以来、限界を指摘されるようになった英米型資本主義に対し、道徳的な要素が強い。日英米仏で活躍する経営学者や歴史家による研究成果をまとめたのが、東洋経済新報社の『グローバル資本主義の中の渋沢栄一』(著・パトリック・フリデンソン、ジャネット・ハンター、ジェフリー・ジョーンズ、橘川武郎、田中一弘、島田昌和、宮本又郎、木村昌人、3240円)だ。合本主義は、善意に基づく日本のモノづくり精神のルーツかもしれない。