霞ヶ関官僚が読む本
21世紀の官僚像か 自らの考えを本にして世に問う現役たち

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「幻想主義」からの脱却を主張

   現在内閣官房副長官補(次官級ポスト)・国家安全保障局次長を務める兼原信克氏が、2011年に出した「戦略外交論」(日本経済新聞出版社)は現役外交官による極めて論争的な著作だ。「今日の日本のように、戦略環境がどんどん悪化し、かつ財政破綻が心配される国では、『バターか、大砲か』という議論がないほうがおかしい。現実主義に立ち、開かれたかたちで議論を尽くして国民の生存本能と良心を活性化させ、国民の選択に長期的決定を委ねるのが、民主主義国家における安全保障政策である」としつつ、戦後日本の安全保障論議を彩ったとする「幻想主義」(fantasy)からの脱却を主張する。

   現役の官僚が、担当する個別政策・法令の解説本を除き、本を世に出すことには、役所内で好ましい印象を与えない雰囲気が過去にあり、今も全くないわけではない。個人の思惑を超え、自分の考えを公に示し、世の中と積極的にコミュニケーションをとろうとする、これら高位の官僚のスタイルに21世紀の新しい官僚像のヒントがあるのかもしれない。

経済官庁(課長級 出向中)AK

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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