霞ヶ関官僚が読む本
21世紀の官僚像か 自らの考えを本にして世に問う現役たち

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   年齢の比較的高い世代を通じて世論形成に大きな影響力をもつ雑誌に、「月刊文藝春秋」がある。昨年(2013年)8月号から本年2月号まで、「ドキュメント現代官僚論」が連載されていた。ひところの官僚バッシングとは違い、「日本は内ゲバやっている場合じゃないですよ」という印象的な言葉からはじまったこの連載は、それぞれの省庁が直面する課題に迫る好連載であった。そんな中、自らの見解を世間に問うた現役の官僚の本を何冊かみてみたい。

「一片のやせ我慢が立国の大本」と喝破

内閣府政策統括官による「論語と『やせ我慢』」
内閣府政策統括官による「論語と『やせ我慢』」

   内閣府政策統括官(経済社会システム担当、局長級ポスト)である羽深成樹氏が、先ごろ出版した「論語と『やせ我慢』」(PHP研究所)は、副題に「日本人にとって公共心とは何か」とある。日本人の倫理観の根底には儒教の教えがあるとして、論語を土台に考察を行う。儒教ぎらいとされる福沢諭吉の考えをたどり、「一片のやせ我慢が立国の大本である」と喝破する。また、「時代の風を受け止め、消化し、中庸を見出して、伝統の上に、新しいスタイルをつくり出していく。それが日本流といえるのではないか。」と提起する。

   著者は、あとがきで、「あたりまえのことだが、国は公共性の空間がなければ成り立たない。わが国を取り巻く難しい環境のなかで、日本の民主主義は、公共性の空間は、どうなっていくのか。本書が、そんなことを考えていただく契機となれば幸いである。」とする。

   なお、「論語」に関しては、呉智英著「現代人の論語」(文春文庫 2006年)も味わい深い。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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