集団的自衛権を使って自衛隊を海外で戦えるようにするかどうかが大問題になっている。拡大解釈されて本当の戦闘に加わってドンパチする、そうなる可能性がいま拡大中なのだ。アメリカ軍のことでも、もちろん映画の話でもない。日本人が銃を撃ち、あるいは撃ち殺されるかも知れない。この際、自衛隊について考えておこう。『いざ志願! おひとりさま自衛隊』(岡田真理著、文春文庫)は、27歳女性の入隊体験記。そこで何が行われ、女性が何を思ったかをストレートに語っている。国民の多くが現実感を持たないうちに進む態勢づくり。これでいいのだろうか。【2014年6月22日(日)の各紙からⅠ】
「まさか銃を」の世界がすぐそこに
美少女アニメキャラを表紙カバーに、著者の書きぶりまで、なんともライト感覚に仕上げてある。海外派兵の議論には一見そぐわないが、では実際の自衛隊生活を知る政治家や識者は、賛否どちらの側にもごく少ない。まして、若い女性の受けとめ方を知るにはピタリの一冊だろう。
34歳未満までOKの陸上自衛隊予備自衛官補に応募した著者は、猛暑なのにクーラーなしの8人部屋に始まって、しごきぬかれた訓練(5日間を10回)を詳細に記録した。
64式自動小銃の重いこと。それを「まさか銃を触るとは」「まさか銃を撃つとは」。土砂降りドロンコだろうが、氷の張った水溜りだろうが匍匐前進。全身アザだらけになって思ったのは「ああ、戦争なんてしたくないなぁ」だそうだ。
集団的自衛権問題が持ち上がる前に書かれた本の文庫化。派兵の賛否を論じるわけではないが、実弾射撃のリアルな世界がすぐそこにあることをわかりやすく示した。この自衛隊を海外に送れば、そこはもう訓練場ではない。どんな理由をつけようと、撃ち合い即殺すか殺されるかの戦場だ。
「まさか海外の実戦で敵兵を撃つとはなんてことになりかねない。それでも彼女は突っ込むだろうか」と、毎日新聞の書評でやくみつるさんが問いかけている。