母子だけ、父子だけの家庭が増えている。問題はその生活、経済的にも時間的にもあまりにも「生きづらい」実態だ。『ひとり親家庭』(赤石千衣子著、岩波新書)で、自らもシングルマザーとして寄り添ってきた当事者団体のリーダーが救援を訴える。少子化の一方で離婚が急増する社会の、緊急課題。「これ以上、がんばれない」と表紙帯にある文字からはギリギリの切実さがあふれ出る。【2014年6月1日(日)の各紙からⅡ】
これを放置しておいていいのか
ひとり親家庭の生活が「きっと大変だろう」と想像することはできても、具体的な実態を正確に理解するする人がどこまでいるかと、この本は問いかける。
母子家庭123万世帯、父子家庭22万世帯。どちらも厚労省調べだが、離婚の増加や家庭内暴力・ドメスティックバイオレンスのために増加傾向だ。その数字に出ない実状と課題とを、本はぎっしりと詰めこんである。
保育料を払えず滞納100万円、もっとも困るのは病気のとき、昼の働きだけでは足りずにする深夜居酒屋とのダブルワーク、数時間の睡眠で子のために早朝からお弁当をつくる母、バイトに吸い寄せられる子どもたち、友だちづきあいやいじめ・不登校……時間も、お金も、気持にも余裕がないという実態。こんなことを日本の社会が放置しておいていいのだろうかと考えさせる。
どうにかして収入を得なければ親子ともに生きられない。怪しげなベビーシッターに子どもを預けたための悲劇も、ついこの前あったばかりだ。非婚のシングルマザーに寡婦(夫)控除が適用されない制度上の不備もある。他方には高齢のシングルマザーも増えている。ひとり親家庭問題を考えると、日本社会のあり方につきあたる。書評は東京新聞と中日新聞に小さく。