【書評ウォッチ】元キャプテン宮本恒靖が語るW杯 楽しむ知識と未来文化論

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   サッカーワールドカップが間もなく開幕する。どっと出回る関連本の中から元日本代表キャプテンの宮本恒靖さんの著書2冊が別々の2紙にピックアップされている。

   『宮本式・ワールドカップ観戦術』(朝日新書)は、世界のスーパースター紹介から日本チームの展望、さらに出場して得たプラスαまで大会を楽しむ知識がたっぷり。

   『日本サッカーの未来地図』(KADOKAWA)は、社会とのかかわりで考えた文化論・ビジネス論。

   二つ合わせれば、世界的お祭り騒ぎを人それぞれに理解するためのガイドブックになりそうだ。【2014年6月8日(日)の各紙からⅠ】

スター選手、日本代表の課題

『宮本式・ワールドカップ観戦術』(朝日新書)
『宮本式・ワールドカップ観戦術』(朝日新書)

   著者は02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場した後、国際サッカー連盟が運営する大学院レベルのスポーツ学研修コース・FIFAマスターを日本人の元プロサッカー選手として初めて修了した「知性派解説者」。その経験や知識から多角的にまとめたのが『ワールドカップ観戦術』だ。

   一つにはメッシ、ネイマールに代表されるスーパースターや注目選手・チームを観る機会だとして、彼らの人間模様や駆け引きにも触れて解説している。優勝候補としてブラジルやスペインのほかにウルグアイを高く評価している点が目を引く。

   今回の日本チームについては「ゲームへの入り方」「サイドMFに注目」などの課題と展望を縦横に。過去を振り返っては「出場してわかった素晴らしさ」を力説し、「中村俊輔の代表落選」の衝撃も隠さない。

   「シュートに着目するのは観戦初級者で、中、上級者はそれぞれ違うところをみるという」との、小さな無署名書評が朝日新聞に。

サッカーは何を提供できるのか

   サッカーのあり方を見つめた『日本サッカーの未来地図』では、著者は「サッカーを文化にしたい」と訴える。そこにはスポーツビジネスの観点からだけでなく、選手の引退後をどうするか、サッカーが社会に何を提供できるのかの問題が横たわる。

   元キャプテンは、選手たちが現役中から社会貢献を考えればセカンドキャリアにスムーズに移行できると提言。サッカーを通じて相手を思いやる心を育てたいともいう。

   サッカー文化は「人間関係を学ぶ場を提供できるか否かにかかっているのかもしれない」とは読売新聞の評者・松井彰彦さん。理想と現実がワールドカップで交錯するだろう。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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