体力的にも精神的にも相当きつい。危険で金もかかる。人だかりで登山道に渋滞ができる日が多くなった。それなのに富士山の人気は衰えを見せない。なぜ人は富士山に挑むのか。夏の登山シーズンを目前に控え、富士山の魅力に迫る。
J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」https://books.j-cast.com/でも特集記事を公開中。
2014年は、日程・ルート変更に注意
『富士山ブック 2014 登る!! 富士山 (別冊 山と溪谷)』
今年の富士登山は、山梨県側の山開き日程と、静岡県側の山開き日程が異なる。また、下山する際の道間違いを防ぐため、一部ルートが変更された。こうした最新情報はしっかりおさえて登山に挑みたいものである。計画を立てる際にぜひ目を通しておきたいのが、山と溪谷社の『富士山ブック 2014 登る!! 富士山』(著・佐々木亨、編・山と溪谷社 雑誌編集部、1000円)だ。2014年版は、定番の基本情報に加え、マイカー規制や山小屋のアップデート情報、山麓から登るロングトレイルや富士五湖をはじめ周辺の湖を縫うように進むワンデイハイクの提案など、初心者だけでなく、リピーターも満足できる内容となっている。電子版(765円)も同時発売されており、タブレットやスマホに入れて携帯できるのが実用的だ。
富士山が写っていない!? 異色の富士写真集
『テッペン!死ぬまでに見たい、富士山頂からの絶景』
富士山の人気は今に始まったことではない。江戸時代には、「富士信仰」がブームとなった。ホンモノに登らなくてもご利益が得られると、関東地方の神社などには1~2分で登頂できてしまうミニチュア版の「富士塚」が数多く作られた。同じように、気軽に富士登頂を疑似体験できるのが、講談社の『テッペン!死ぬまでに見たい、富士山頂からの絶景』(著・小野庄一、1620円)だ。神々しいご来光、湧き上がる白い雲、遠く眼下にキラキラと光る街の夜景、天の川など、登った人でも見られないような奇跡の絶景が、地上にいながら楽しめる。トイレ休憩の行列や筋肉痛とは無縁だ。富士山の写真集なのに、誰もがイメージする下から眺めた姿が写っていない異色本。富士登山を経験した人には、自分が見た景色との違いを比べてみるのも楽しい。
危険すぎる場所から届いたメッセージ
『一歩を越える勇気』
危険を冒しても、それを乗り越えたときの達成感がクセになる、という登山好きがいる。その気持ちがインドア派にも理解できるだろうか。富士山よりもさらに高い、人が生きられないほど酸素が薄いことから「デス・ゾーン」と呼ばれるヒマラヤ8000メートル峰に、酸素ボンベを使わず、インターネット生中継を行いながら登頂した著者による本がある。サンマーク出版の『一歩を越える勇気』(著・栗城史多、1404円)だ。心に芽生えた夢をあきらめていないか、目標をかなえるためには何が必要か、といったメッセージが登山とは無縁の読者からも支持を集めたのを受け、文庫化された。壮大な冒険を成功させるには、地上での資金集めが鍵となるが、そのユニークな営業法も紹介されている。ちなみに文庫本の印税は前回の登山で負った凍傷の治療と、6月下旬から再挑戦するヒマラヤ登山の活動費に充てるという。