霞ヶ関官僚が読む本
"日本帝国の失敗"ものの中で印象に残った一冊 「戦略的」過ぎ「戦略性」を失う

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『日本はなぜ開戦に踏み切ったか 「両論併記」と「非決定」』(森山優著、新潮選書)

   各方面の主張をバランスよくちりばめ、みんなが合意できる曖昧な内容とする。決めなければならないことではなく、決め易いことから決める。しばしば指摘される日本型意思決定のこういった特徴を、著者は「両論併記」と「非(避)決定」という言葉で端的に表している。今の霞が関、ひいては日本型大組織にも通じるエピソードが満載だ。

「計画的にやれといわれ人生誤った」と陸軍官僚

日本はなぜ開戦に踏み切ったか
日本はなぜ開戦に踏み切ったか

   明快な分析に従って軽快に読み進める中で、一カ所、「ん?」と引っかかった箇所がある。それは、第五章で引用される陸軍官僚・西浦進の戦後における次の述懐である。

   自分たち軍人が「あまり若い時から戦略とか戦術とかいうようなことで、ものごとを計画的にやれと言われていることが、かえって人生を誤ったのではないか。」

   最初、意味がよく分からなかった。巷間よく言われるのは、「日本に戦略がなかった」ことではないのか。「戦後のことまで考え戦争を始めた米国と、戦争の終わらせ方も考えていなかった日本」といった比較。なぜ、戦略なき日本の元軍人が、戦略を持てばよかった、ではなく、戦略とか戦術とか言い過ぎた、という趣旨の述懐をし、著者が共感をもって引用しているのか。

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