空洞化の実態は雇用不安そのもの
恐ろしいのは、原因が一企業の経営失敗だけではないことだ。大中小の企業が低賃金や経済成長を求めて生産拠点を中国や東南アジアに移した結果、日本から工場が消え、国内で働く人たちもアジアなみの低賃金や重労働を求められる。こんな構造が定着しつつある。「空洞化」というだけでは漠然とするが、実態は雇用不安そのものだ。
韓国や中国の新興企業におされたためだとも言われるが、よく見れば、陰で協力して利潤を得た日本企業もある。なんだか自縄自縛の際限ない現実をも、本は指摘している。
<もう一冊>『日本の雇用と中高年』(濱口桂一郎著、ちくま新書)は、欧米では若年層から、日本では中高年から進む人切りの流れを考えた。朝日新聞に小さく、評者無署名。
(ジャーナリスト 高橋俊一)