麻薬の「光と影」の両面に迫る
『〈麻薬〉のすべて』
ではいったい、人類を悩ませる麻薬とはいったい何者なのだろうか。講談社現代新書の『〈麻薬〉のすべて』(著・船山信次、821円)は麻薬の基礎知識を学ぶ、絶好の「入門書」だ。
麻薬と人類との有史以前より続く深く悩ましく関係を、古今東西の逸話をまじえて紹介。依存症、弊害などの説明のほか、今後麻薬にどう向き合ったらいいのか、といった提言もされている。
また、麻薬の害を一方的に記述するだけでなく、モルヒネががんにおける痛みを緩和することを挙げ、その重要性も強調している。先進国の中でモルヒネを最も多く使用している米国と比較すると40分の1以下にとどまっている日本の現状に警鐘も鳴らしている。いわば、麻薬の「光と影」の両面について、正確に触れている良書といえる。