患者・家族の立場で、聞き、受け止める場を
夫の肺がんについて、「5年生存率15%」という「希望の持てない告知」を受け、混乱の極みにあった妻が、一人の医師の次の言葉に出会うことで、夫とともに闘病の意欲を取り戻していく場面が出てくる。
「身近な親族にとってのがんの話と、3人称(一般論)のがんの話は全く異なります。できるだけ、2人称(あなた)の立場でご相談に乗れればと思います」
それまでにも様々な専門家からの助言や情報を得ていたけれど、この「2人称」という言葉に勝るものはなかったという。
「同じ事実でも、違う言葉で語られることで、受け止め方が変わる」経験が、絶望や無力感といったマイナス思考から、前向きに考えようというプラス思考に変えてくれたと語る。
「どの治療法がいいか一緒に考えましょう」という医師の姿勢を通して、治療に向けて、「自分自身が主体的にならなければならない」という覚悟ができたという。
本書では、患者・家族としての体験を経た医療関係者が、口々に、患者・家族の目線で話を聞き、その気持ちに沿った対応することの大切さを説く。そして、「病気の話ができる外来カフェ」や英国の「マギーズがんケアリングセンター」のような場があったら、と語る。
長年付き合ってきた地元のかかりつけ医が、専門医には聞けないがん闘病中の不安や悩みの相談相手となってくれたことで、心の支えとなった実例も示されている。
誰でも、自らが患者やその家族となれば、それまでは思いもよらなかった心の苦しさ、不安を抱えることとなる。どんな形でもよい、患者・家族の立場で、話を聞き、思いを受け止める人や場が増えてほしいと思う。
厚生労働省(課長級)JOJO