機能不全の報道、無自覚な国民
三点目は、国民の無自覚であろう。著者の言うとおり、「政府は毎年国民から税金を50兆円ほど集め、国民から別に50兆円ほど借金して100兆円ほど使って国を運営している」。このやり方は「超低負担で使う方は大盤振る舞いでき」る一方、当然毎年国債残高を増やし続けることになるのだが、「国(政府)も国民も気分よく日々をすごすという安直でもっとも(増税などの)摩擦の少ない楽しい生き方を明示的に言わずにこっそりと選択してきた」。著者は巻末で、1000兆円の借財を日本の生き方の象徴であるとし、「だれの責任というでもなし、どこかで誰かが全体設計をしたわけでもなく、…トータルで無責任な楽観主義の幸せ団子である」と指摘している。著者は、日本国民が借金はいつか返さなければならないという自覚なく、また路線選択の責任感もなく、何となくふわーと借金路線を歩んでいるということこそが一番の問題だとしているのであろう。筆者も同感である。(書評子注:浅学にして「幸せ団子」の意味がよくわからないが、丸めて串に刺したものという意味か。なお、巣鴨のとげぬき地蔵高岩寺境内では「幸福(しあわせ)だんご」という醬油味の団子が屋台で売られていて、多くの善男善女が買い求めている。)