「日本経済はどこで間違えたか」(菊池哲郎著 イースト新書)
一時は世界もうらやむ豊かな国になりながら、失われた20年という長い衰退期を経て、日本は人類史上未曽有の1000兆円の公的債務を背負うことになった。本書は、この間経済記者として政府の経済運営を間近に見てきた著者が、この衰退と借金拡大の過程を検証するものであり、渾身の力を振って日本人に警鐘を鳴らすものである。
経済記者が借金拡大過程を検証
著者は日本経済の盛衰を1975年のランヴイエサミットから説き起こす。先進7か国は、この第1回サミットから最初の一巡7回のサミットで石油危機乗り切りという大成果を出し、1982年からの2巡目では西側優位を確定し、東側世界は崩壊した。この過程で日本は大きな存在感を発揮した。
その後、日本は国債の大量発行時代に入ってゆく。著者は、昭和の最後の14年間、平成初期の特例国債からの脱却期間、平成10年以降の大量発行時代と、三つの時期に分けて筆を進めていく。その間の多くの注目すべき事件について大胆な解説を展開しつつ、日本が1000兆円もの借金を作り今も増やし続けていることの原因を多角的に論ずる。筆者の理解では、著者が最大の要因と考えているのは以下の三点ではなかろうか。