人間だけのために特化した食事では
細菌の栄養源は食物繊維を発酵させた有機酸。ところが、現代的な脂肪分と精製炭水化物の多い加工食品中心の食事では、これが不足する。人はエネルギーを得られても、細菌は飢える。体内に共生する3兆の生物のためではなく、たった一つの生物・人間だけのために特化されたのが、現代の典型的な食事なのだという。
極論にも見えるが、無茶な空論ではない。むしろ科学的に考えての警鐘に、この本の価値がある。今では加工食品の害も、食物繊維の重要性も、多方面から指摘されている。著者の危惧がそっくりあてはまるとは言い切れないだろうが、では現状が十分かと問われると、著者の問題提起はがぜん現実味をおびてくる。要は、これからの人間の行動次第でどちらにも転ぶ、危なっかしい境目に私たちはいるということか。
書評は日経新聞に。「料理の歴史・経済・科学など多彩な要素が詰め込まれた味わい深い物語」と評者の内田麻里香さん。料理が人をつなげる面も強調し、多角的に紹介している。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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