制度、政府、政策が技術に追いつけず
テクロノジーの進化の驚異的速さと、人間やその価値観、あるいは人間が作り上げた制度、政府、政策がテクノロジーの進化について行けなくなっているという議論は、ICT分野での変化の早さの一端を知る身には非常な説得感が感じられ、これが給与や雇用の伸び悩みや所得の二極分化につながっているという議論は恐怖感を感じるほどである。
筆者はこれらの問題への処方箋として、グーグル、アップルに代表されるような新しいビジネスモデルの創出による組織革新の強化、教育等人的資本への投資等を挙げ、さらに具体的な提言を行っている。これらを前提に、将来に対し楽観的な結論を導き出している。これらの提言については既視感のあるものも多く、また、アメリカ社会を対象とする処方箋ということで、迫力のある問題提起の前半に比べ、説得力にやや乏しい印象も受けるが、新しい時代に適応した教育や投資、制度(さらには我々のスピリット)をスピード感を持って整えていくべきとの方向性は当を得ていると思われる。
なお、本年には、本書の続編に当たる「The Second Machine Age」(14年3月現在 邦訳未刊行)が刊行されている。この中で、機械が人間や動物の肉体労働を代替した「第1の機械の時代」に対し、現在、「第2の機械の時代」が進行とし、機械が知能を使う時代と位置づけ、議論を展開している。
人間は長い歴史の中で、その時々の環境変化に適応することで、繁栄を遂げてきた。環境変化が加速する現在、組織にせよ、個人にせよ、環境に適応する変革をスピード感をもって行うことがさらに求められている。
燕京 某省室長級