ペット論は賛否が分かれやすく、ときには感情的対立を呼ぶこともある。『犬が私たちをパートナーに選んだわけ』(ジョン・ホーマンズ著、阪急コミュニケーションズ)は、人と犬をとりまく問題を多角的に考えた。犬を「自然からの友」とする一方で、不自然な愛玩犬作りや不要大量処分の問題まで。浮かび出るのは人間の暮らしそのもの。ペットを飼うとはどういうことかを、犬好きにも犬嫌いにも問いかけている。【2014年4月20日(日)の各紙からⅠ】
もうフン片づけの問題だけではない
著者はニューヨークのジャーナリストで、ひと目ぼれしたという愛犬とマンハッタンに住む。人は犬になぜ魅せられ、なぜ愛するのかを考えて世界中を取材して回ったそうだ。ペット化の歴史や「犬は自然と人の橋渡し」という位置づけは平凡で変わったものではないが、現代の愛犬事情にふれると俄然、論調は鋭くなる。
犬をペットとして飼いだした人類は、商品化を進め、風変わりな犬が売れるからと無茶な交配を繰り返してさまざまな犬種をつくった。奇形化。いつしか街では、なにげない散歩でも実は異様なペットシーンがほとんどという。それも飽きれば売るか捨てるか、挙句に待つのは秘かな大量薬殺処分。
この指摘が極論だとは言い切れないし、米国だけのことでもない。こうした現状を、犬を飼う人がどこまで分かっているのか。かわいい、かわいいばかりでよいのか。ペットの問題は、もうフンの片づけだけではすまないことがよくわかる。
「人間が自然からの使者を持て余し、扱いきれなくなった異様な姿が映し出されている」と朝日新聞に載せた探検家・角幡唯介さんの評価が的確で、わかりやすい。最良の友を最良の状態で私たちが扱っているとは、どうも思えない。
人を励ます「ど根性スキマ植物」
<もう一冊>『スキマの植物図鑑』(塚谷裕一 著、中公新書)が読売新聞に。「ど根性○○」などとたたえられ、話題になることもある。アスファルトのヒビや電柱の根元、ブロック塀や石垣の小さな穴など、あちこちのスキマから芽生える草花。こうしたスキマは植物たちの「楽園」なのだという。
庭先から風やアリに運ばれてたくましく根づくタンポポやスミレ、ナンテンなど代表的な110種を季節分けしてカラーで。これもまた人類の友だろう。まして、都会の一角にひっそりと花咲く姿に励まされる。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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