政策への関与――政府の委員会での立ち振る舞い――
文明開化の時代には、「官」と「学」が一体として運営され、東大教授がそのまま役所の官職を併任していたこともある(初代の内務省土木技監の古市公威氏や第5代中央気象台長=現在の気象庁長官=の藤原咲平氏)。
今日でも、政府の審議会等に東大教授が委員として就任していることは多い。著者自身も国土審議会委員に就いているほか、各種国際交渉に日本政府推薦の専門家として出席することも多いという。
こうした社会的役割について、著者は、「東大教授が専門として深く学究し、世界の誰よりもまあまあ良く知っている事象はこの世のほんの一部に過ぎません。しかし、一芸に秀でるものは関連した芸にも通じているのではないか、という世間の期待を背負い、社会の意思決定や判断に対して知識人として助言する機会」であり、「教育研究活動に対する国民社会からの公的支援への対価として当然の義務」だと語る。
とはいえ、「御用学者」のレッテルを貼られることは本意ではないし、政治や政府との緊張感や距離感をどう保つかは難しい課題だという。「個人の見識と良心に基づき、できるだけ良かれ、と思う方向に結論が落ち着くように努力すべき」であり、「(反政府側や政府側の)両者から嫌われようとも賛成側、反対側、両方の理屈や気持ちを理解し、両者が歩み寄れるような道筋を考え、その方向へ誘導するのが大学教授の役目」と語る。
興味深かったのは、著者が語る、政府の会議で発言する際の二つのポイントだ。
①単に意見を述べるのではなく、答申案や報告案等の文書のどこをどう加筆修正すべきかを具体的に提案すること
②長々コメントせず、発言時間を厳守すること
確かに、的確な指摘だと思う。