霞ヶ関官僚が読む本
動乱の時代にこそ、人間性の瞬きを垣間見る

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底流に感じられる善意や良心への信頼と希望

   無論、当事者でない自分にはわからない。が、本書が描く、集団催眠のような極限状況の中でこそ剥き出しになる人間の本性そのものについては、よく理解できる。相互監視、洗脳、密告、盲信、捏造、追従、裏切り…保身のために平気で仲間を売る者、僅かな権力を手にした途端豹変する者。そして主義を貫けず沈黙する大多数の者。悲しいことだが、脆く弱い人間の姿が、常にそこにある。

   しかし、読後感があまり暗くないのは、本書の底流に、微かではあっても人間の善意や良心に対する一縷の信頼と希望が感じ取れるからだろうか。

   司馬遼太郎氏は、著書の中で、人々の中に正しく揺るがない芯ともいうべき「恒心」がなければ、国は滅びるだろうと述べている。

   残念なことに、国家が市民のために存在するという観念は、数世紀前に登場して以降、まだまだ世界中に定着したとは言い難い。この希有な人間ドラマは、我々がなぜ日々世相を学び、なぜ国家や社会に真摯に向き合っていかなければならないかを、圧倒的な物語を通じて再認識させてくれる。

総務省 (課長級) 凜青

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