【書評ウォッチ】日本人の桜好きは「つくられていた」? 歌人がさぐる美意識の正体

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政府に反対するなといった無茶な論理

   まあ目くじら立てなくてもと安易に考えがちだが、政府の決定には反対するなといった無茶な論理がまかり通ってきた時代もある。桜の潔さが大勢従順にすり換えられ、悪用されてきたというしかない。今でも「政府が右ということを左と言うわけにはいかない」と臆面もなく発言した人がNHKの会長にすわり続けるあたり、桜の根は深い。

   桜ソングもよくはやる。「日本社会が活力を失い格差が拡大する今、共同幻想を桜に見いだそうとしているのか」「この国のゆくえを案じる一市民の声である」と、東京新聞と中日新聞の評者・岸本葉子さん。だれが何と言おうと、桜の潔さ自体はすばらしいのだが。 <もう一冊>世界遺産に登録された『富士の山旅』(服部文祥編、河出文庫)が読売新聞に。名山にこだわった人々による二十二の記録が山頂から五湖・ふもとまでを案内してくれる。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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