官僚の頂点極めなお…祖国のため政府批判
人事などについての不満で役所を途中で辞めた元官僚が、その鬱憤を晴らすため、日本政府への批判的な著作を出すことは数多い。しかし、駐米大使、事務次官という官僚の頂点まで極めた者がそれをすることは極めて珍しい。このようないわゆる「戦前」についての記憶を持つ方々の真摯な考えや想いをどう継承するかは、未だに大きな国民的課題だ。
本書の最終章には以下の記述がある。「一般に国際情勢の判断や行動にあっては、より主体的であって貰いたい。他国の不当な行動や、主張や要求に対しては、より毅然とした態度で、できれば直ちに反論あるいは拒否し、時には無視し、時には反対注文をつけてほしい。この際対応が遅れれば迫力を欠く。速やかに判断し、ほぼ即座に反論や批判を加えるべきだ。そして大国にはおもねず、中小国にも親切な国として、必要な時は救いの手を差しのべる日本であってほしい。」また、「独立の精神、恥を知ること、勇気、そして他人の立場への配慮は、個人にも、国家にも欠かせない資質なのだが、冷戦終了後の混沌たる世界で益々重要となっている。」という。村田氏の願う、日本人が「高貴さ」を取り戻す日とは、実は、氏が貢献した戦後の日本外交の地道な歩みの上に成就するものではないのか。
経済官庁(課長級 出向中)AK