新しい女性の生き方として「専業主婦に戻る」現象が米国で起きているという。それも高学歴な人に多い。その理由をわかりやすく、「これまでの主婦とは違うよ」という内実までも踏み込んで『ハウスワイフ2.0』(エミリー・マッチャー著、文芸春秋)がリポートする。男性社会に挑み続けてボロボロに疲れ切った母親世代のようにはなりたくないと、ストレスいっぱいの高報酬よりもホッとできる暮らしを選ぶのだそうだ。
人によって田舎でのんびり、在宅起業、中にはブログ発信で社会的影響力も。どなたも個性的で、賢さはただ者ではない。日本の若い世代にも重なるが、誰でもできるかどうか。そのへんも読み解くなら、価値ある一冊になる。【2014年3月23日(日)の各紙からⅠ】
ハーバード、エールなど一流大学卒の女性たちが……
日本でもバリバリのキャリアウーマンが格好よく脚光を浴び始めて久しい。実際に仕事を持つ女性が増え続け、「女性の力を経済成長に」と安倍首相もしきりに強調する。女性の労力をもっと活かそうと配偶者控除の年収制限をどうするかが論議にのぼりだした。しかし、時代はもうその先にいっていることを、この本が指し示す。
米国ではハーバード、エールなど一流大学を出て得た投資銀行、広告代理店、官庁などの職を捨てて主婦になる女性が続々と。「ママみたいに疲れきるのはいや」が最大の理由という。キャリアウーマンの実情をいちばんに知るのは、評論家でも学者でもない、なんといっても彼女の娘たちなのだ。その心情を同世代の著者が詳細に聞きとった。
すると、これまでの主婦像とはちょっと違う点も見えてきた。
従来のイメージから抜け出た主婦たち
法律事務所に復帰せず自宅キッチンでカップケーキを作って売り出した31歳、広告関係の仕事を辞めて手編みのマフラーを売るブルックリンの女性など。ウェブやSNSを使いワークシェア、ブログ発信から起業をめざす人やホームスクーリングでの子育ても。自分を見定め、夫との分担をきちんとするのも特徴だ。
従来のイメージから一歩抜け出たハウスワイフ2.0・第二世代の主婦像が浮かび上がる。
確固たる自分の意思で会社を辞め、子育てや料理に力を入れながら、ブログで情報発信し、手作り品をネット販売、ときには社会的発言をすることも臆さない生き方。「進化した専業主婦の馬力には目を見張るものがある」と、朝日新聞の評者・梶山寿子さん。書評は日経新聞にも。伝統的な専業主婦や「玉のこし」とも、婚活ブームとも異なる姿が、男たちを驚かせ、同世代の共感を広げつつある。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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