春一番が吹いて、サクラ前線が近づけば、花見、遠足、ハイキングと行楽シーズンの幕開けだ。行楽といえば、楽しみは弁当。野外で暖かい日差しを浴びながら弁当を開く幸せは何物にも代え難い。日本がまだ貧しかったころ、白いご飯に赤い梅干を入れただけのものを「日の丸弁当」と呼んだが、そんな弁当は今は昔の話だ。最近は、子どもから大人向けまでカラフルでおしゃれな弁当が次々に登場している。
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国民的人気コミックのキャラ弁当
『ONE PIECE 海賊キャラ弁当 BOOK』
子どもの弁当のおかずといえば、玉子焼きにウインナー、空揚げが定番のようにいわれるが、毎日同じものばかりというわけにはいかない。まして遠足や運動会となると、見た目の楽しさも要求される。料理が得意でない母親にとって、弁当のおかずは頭の痛い問題だが、集英社の『ONE PIECE 海賊キャラ弁当 BOOK』(イラスト・尾田栄一郎、1380円)は、そんな母親の心強い味方だ。
動物や乗り物をかたどって弁当の中身を飾るやり方は昔からあったが、いまはキャラ弁当として定着している。本書は国民的人気コミックのキャラ弁当のレシピである。「海賊王弁当」「チョッパー弁当」「ウォーターセブン弁当」や、マフィンやロールケーキなどのデザートまで簡単につくれる。特別付録として弁当キット10点も付いている。
フレンチだけでなく和食の重箱も
『ジョエル・ロブションおべんとうの本』
インフォレストからの『ジョエル・ロブションおべんとうの本』(著・ジョエル・ロブション、1470円)は、ミシュランガイドで世界一多くの星を持ち「フレンチの皇帝」といわれる著者による大人の弁当の本である。日本にも店舗を展開しており、フレンチだけでなく和食弁当のレシピも紹介している。パリジェンヌ好みのカフェランチが詰まった弁当、ワインを抱えてピクニックに行きたくなるような弁当、花見や誕生会にぴったりの重箱、グリーンピースの豆飯弁当など、写真を見ただけで楽しくなる弁当の数々だ。
余談だが、bentoは今やフランスの辞書にも載っていて、デパートの食器売り場には色々な弁当箱が売られているそうだ。安全な食べ物を自分の手で作り、学校やオフィスに持って行く日本の習慣が体のためにも良いと評価されているという。
全国の学校で広がる「弁当の日」
『世の中への扉 弁当づくりで身につく力』
「弁当の日」というものがあるのをご存じだろうか。子どもたちが自分でつくった弁当を持って登校する日のことで、全国の小中学校や高校にまで広がっている。親は手伝わず、自分で献立を考え、材料を買ってきて、調理して、弁当箱に詰め、片付けもする。2001年に香川県で始まり、今や全国47都道府県の1000校を超える学校で行われている。
講談社の『世の中への扉 弁当づくりで身につく力』(著・竹下和男、1260円)はこの取り組みを始めた小学校の校長の実践記録である。「子どもたちの心理的な空腹感を満たすことはできないか」という思いから始めたが、子どもたちは弁当づくりの経験を通して、自己への肯定感や親への感謝の気持ちを持ち、食べ物の大切さに気付くようになったという。自分でつくった弁当を囲む子どもたちの明るい表情の表紙が印象的だ。