霞ヶ関官僚が読む本
陸軍省勤務を回想…実務の詰めを重視した合理的な指摘

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高等司令部・中央部に 「事務の実兵指揮能力」欠如

   また著者は、ペーパープランとしては立派だが実際には空転してしまった例、つまり事務能力欠如の事例を再三指摘する。例えば、昭和18年(1943年)、著者は、米潜水艦による船舶被害が増大する中、最も期待された対策であったはずの対潜音波警戒機が全く成果を上げていないことに気付く。関係者を軍事課長室に集めて生産から取り付けまで1台ずつトレースしたところ、輸送途中でストップしていたりして、生産された百数十台のうち、実際に船に取り付けられていたのはわずか2台でそれも取扱い訓練中であったことが判明した。あるいは、昭和19年秋のレイテ決戦時、著者は、戦場に送った新鋭戦闘機の稼働率が低く、数十機の戦隊中稼働機が2、3機しかないという声を聞き、調査に乗り出す。搭乗員から話を聞き、また飛行機の生産現場から発送の各過程をしらみつぶしに調べると、フィリピン進出前に上海で待機中、連日防空任務にあたっていたため上海出発時には既にオーバーホールの時期を迎えていたというような事情が次々に判明する。そして著者は、丁寧に調べて全体を総合調整すれば解決できる問題であることを指摘し、高等司令部や中央部の人々に「事務の実兵指揮能力」が欠如していたことを嘆くのである。このあたり我々も大いに参考にすべきであろう。

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