【書評ウォッチ】非正規雇用、低賃金、給付減、未婚 世界の若者に共通の「絶望」

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   少子高齢化は「こまった現象」を通り越して深刻な段階だと、よほど鈍い人でも感じている。『僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか』(リヴァ・フロイモビッチ著、阪急コミュニケーションズ)は、世代間の格差を世界各地に取材した。賃金は安く、雇用は不安定。税金は高いのに社会保障は減る。これではあまりに不公平ではないか。世界中の親たちが渋い顔でうなずくしかない。若者よりも中高年がむしろ読むべき問題提起の書だ。【2014年3月2日(日)の各紙からⅡ】

振り上げたこぶしの硬さ

『僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか』(リヴァ・フロイモビッチ著、阪急コミュニケーションズ)
『僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか』(リヴァ・フロイモビッチ著、阪急コミュニケーションズ)

   世代間の格差拡大と社会の行き詰まりムードは、日本だけではない。ウォール・ストリート・ジャーナルやダウ・ジョーンズ・ニューズワイヤ紙に各国の金融政策を書いてきた28歳の記者がまとめた本には、高学歴の若者が就職できない米国や6人に1人がニートのイギリス、高校生も希望を持たないスペインの現実が。日本や中国、ブラジルなどもふくめて非正規雇用、低賃金、給付減、未婚、借金、親との同居……世界中の若者たちに共通するのは「絶望」だと、著者は言い切る。

   赤字削減重視の政府予算に「若者の未来を気にかけていない」とかみつき、まずは経済を再び軌道に乗せる義務が各国の指導層つまり大人たちにはあると主張する。自分たちだけがヌクヌクしやがってということだろう。

4日半ごとに100万人増える世界をどうする

   著者も属する世代の憤懣を代弁してもいる。そのうえで、著者は危機から生まれてきた若者の「創造性」や「柔軟性」に期待をつなぐ。自力でのし上がろうとする若者へのメッセージをこめながら「どうしてくれる?」と振り上げたこぶしは硬い。

   「未来への不安や不信を期待や自信に変えるのは容易でない」という日経新聞の小さな無署名書評にも危機感がにじむ。否定できない現実が世界中にあることはよくわかる。改善策となると、こうした本にしては具体的な方だが、その実効はまだ霧の中を出ていない。

   世界の現実論では、『滅亡へのカウントダウン』(上下2巻、アラン・ワイズマン著、早川書房)が朝日新聞に。こちらは人口大爆発の問題。現在70億人。今世紀中には100億人を超えると予想されている。なにしろ4日半ごとに100万人が増えていく。十分な食料が地球にあるのだろうかと、誰もが考えてしまう。環境は? 人口抑制策は?

   著者は20カ国余を旅して生態学者や経済学者、宗教指導者らの話を聞き、少子高齢化の先端をいく日本をモデルケースとして注視しているのだそうだ。評者は原真人さん。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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