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映画『アメリカン・ハッスル』に学ぶ 詐欺師はどうやって人を騙すのか

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   詐欺師の映画といえば、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが共演した『スティング』を思い出す。ワルが悪党を騙す話は痛快ではあるが、詐欺は犯罪である。現実の世界では詐欺の被害は後を絶たず、最近はお年寄りを騙す振り込め詐欺や、婚活サイトを利用して女性に近づき、高額なマンションを買わせる詐欺まがい商法が問題になっている。なぜ、人は騙されるのか。騙されないための心構えとは。

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稀代の詐欺師が活躍する米映画

アメリカン・ハッスル
アメリカン・ハッスル

『アメリカン・ハッスル』

   第86回アカデミー賞で最多10部門にノミネートされた今話題の映画『アメリカン・ハッスル』は、天才詐欺師と米連邦捜査局(FBI)が手を握りアメリカ政界を揺るがした「アブスキャム事件」を題材にしているが、河出書房新社の河出文庫『アメリカン・ハッスル』(著・ロバート・グリーン、訳・新庄哲夫、上下とも882円)は、組織犯罪報道の第一人者が書き上げたこの事件のドキュメントである。

   FBIは稀代の詐欺師メル・ワインバーグと司法取引をして巧妙なおとり捜査を仕組み、汚職議員を次々に摘発して全米を騒然とさせた。盗聴、偽のアラブ大富豪、架空のオイル・マネーと材料には事欠かない。詐欺師の二枚舌と米政界・暗黒街のスリリングな攻防が展開される。本と映画、どちらを先にするか、悩ましいところだ。

錬金術にもなる保険金詐欺の実態

小説 保険金詐欺
小説 保険金詐欺

『小説 保険金詐欺』

   犯罪は世の中の移り変わりを反映するものだが、とりわけ詐欺はその傾向が強い。次々と新しい手口が出てきて、昔からある寸借詐欺や取り込み詐欺、籠脱け詐欺に加え、最近は振り込め詐欺、オレオレ詐欺、フィッシング詐欺、ワンクリック詐欺といったものまで登場している。その中で、しぶとく生き残っているのが保険金詐欺だ。保険金殺人事件はしばしばドラマの題材になる。

   祥伝社文庫の『小説 保険金詐欺』(著・今子正義、600円)は、大手保険調査機関に勤務経験のある著者が保険金詐欺の実態を小説として描いたものだ。保険金をテーマにした著作が多いだけにリアルな内容となっている。よく問題になるのが、本書でも取り上げている自殺か事故死かの認定だ。錬金術にもなりかねない保険金詐欺の巧妙な手口を解明する。

「自分にかぎって」の思い込みが危ない

あなたもこうしてダマされる
あなたもこうしてダマされる

『あなたもこうしてダマされる だましの手口とだまされる心理』

   あれほどテレビや新聞で注意を呼び掛けられながら「振り込め詐欺」の被害に遭う人や、「必ず儲かります」という甘言に引っ掛かって損する人が無くならないのはなぜか。草思社の『あなたもこうしてダマされる だましの手口とだまされる心理』(著・ロバート・レヴィーン、訳・忠平美幸、1785円)は、言葉巧みな詐欺師に騙されないための基本的な心構えをアドバイスする。

   著者はテレビCM、セールス、詐欺商法、カルトの洗脳など、ものを売ったり他人をコントロールしようとしたりするあらゆる手口を調査し、ある結論に達したという。その一つは、こうだ。「わたしたちは自分で思っているより説得されやすい。人間は、自分にかぎって他人に操られることはないという奇妙な幻想を抱く傾向がある」。心すべき言葉である。

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